油揚げは、豆腐を油で揚げた食品であり、独特の風味と食感が人気です。味噌汁の具材として、炒め物や煮物などの料理にも幅広く活用され、日本の食卓に欠かせない存在と言えるでしょう。
しかし、一方で「体に悪い」という声も耳にすることがあります。 油揚げの健康への影響について、メリットとデメリットをより詳しく見ていきましょう。
油揚げが体に悪いとされる理由
油揚げが体に悪いと言われる主な理由は、以下の2点です。ただし、これらのデメリットは摂取量や調理方法によって大きく変化するため、適切な摂取を心がけることが重要です。
1. 高脂肪と飽和脂肪酸
油揚げは油で揚げているため、脂質の含有量が高くなっています。油揚げ1枚(約20g)あたり約6.7gの脂質が含まれており、これは他の豆腐製品と比較しても高い数値です。さらに重要なのは、その脂質の種類です。油揚げに使用される油の種類によって異なりますが、飽和脂肪酸が多く含まれている可能性があります。飽和脂肪酸は、過剰摂取すると血中コレステロール値を上昇させ、動脈硬化や心血管疾患のリスクを高める可能性があるため、注意が必要です。使用する油の種類を把握し、ヘルシーな油を使用している製品を選ぶことも重要です。例えば、大豆油や菜種油など、不飽和脂肪酸を多く含む油を使用している油揚げを選ぶことをおすすめします。
2. 食品添加物と遺伝子組換え
一部の油揚げには、凝固剤(硫酸カルシウム、塩化マグネシウム、グルコノデルタラクトンなど)、消泡剤(油脂系消泡剤、シリコーン樹脂など)、保存料(ソルビン酸カリウムなど)といった食品添加物が使用されている場合があります。これらの添加物は、国が定めた基準を遵守して使用されているため、通常量の摂取であれば健康への悪影響はほとんどないと考えられています。
しかし、添加物に敏感な方や、出来るだけ添加物を避けたい方は、添加物不使用の油揚げを選ぶことが可能です。また、原料の大豆が遺伝子組換え大豆である可能性もあります。遺伝子組換え大豆自体に健康被害があるという科学的な根拠は現在ありませんが、遺伝子組換え大豆が気になる方は、「遺伝子組換えでない」または「分別生産流通管理」と表示された製品を選ぶことができます。これらの表示は、原料となる大豆の生産から加工、販売まで、遺伝子組換え大豆と非遺伝子組換え大豆が混ざらないように厳格に管理されていることを示しています。
油揚げのメリット:栄養価と健康効果
油揚げには、体に良い栄養素も豊富に含まれています。適切な量を摂取すれば、様々な健康メリットが期待できます。ただし、これらのメリットは油揚げの栄養価と摂取量に依存し、高脂肪な点を考慮した摂取が重要です。
1. 大豆イソフラボン
油揚げには、大豆イソフラボンが豊富に含まれています。大豆イソフラボンは、女性ホルモンに似た働きをするイソフラボン類の一種で、エストロゲン様作用を示します。そのため、更年期障害の症状軽減、骨粗鬆症の予防、肌の健康維持に役立つと考えられています。また、抗酸化作用によるアンチエイジング効果や、血栓予防効果、コレステロール低下効果なども期待されています。しかし、過剰摂取による副作用の可能性も指摘されているため、適切な摂取量を心がける必要があります。
2. 大豆サポニン
大豆サポニンは、血中コレステロール値を下げる効果や、動脈硬化の予防効果が期待される成分です。コレステロールの吸収を抑制したり、肝臓でのコレステロール合成を抑制したりする作用を持つと考えられています。また、抗酸化作用や抗炎症作用も報告されており、肥満予防にも役立つ可能性があります。ただし、サポニンは消化不良を引き起こす可能性もあるため、過剰摂取には注意が必要です。
3. その他の栄養素
油揚げには、大豆タンパク質、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、亜鉛などのミネラルも含まれています。大豆タンパク質は良質な植物性タンパク質源として、筋肉の維持や修復に役立ちます。カルシウム、リン、マグネシウムは骨の健康に重要です。鉄は赤血球の生成に関与し、亜鉛は免疫機能の維持に重要な役割を果たします。これらの栄養素は、健康な体づくりに欠かせません。
4. 低GI値
油揚げのGI値は比較的低く(約43)、食後の血糖値の上昇が緩やかです。これは、大豆タンパク質や食物繊維が血糖値の上昇を抑える効果を持つためです。そのため、血糖値のコントロールに配慮したい方や、糖尿病の方、ダイエット中の方にも適した食品と言えるでしょう。ただし、油揚げ自体に含まれる脂質によって、GI値が変化する可能性もあるため、油抜きを行うなどの工夫が効果的です。
油揚げをヘルシーに食べるための工夫
油揚げのデメリットを軽減し、メリットを最大限に活かすためには、以下の工夫が有効です。
1. 油抜き
調理前に油抜きを行うことで、余分な油と飽和脂肪酸を落とすことができます。油抜きの方法は、電子レンジ加熱(500Wで30秒~1分程度)、熱湯をかける、フライパンで軽く焼く、お湯で煮るなど、いくつかの方法があります。油抜きをすることで、カロリーを抑え、よりヘルシーに油揚げを摂取できます。また、油抜きをすることで、味が染み込みやすくなるというメリットもあります。ただし、油抜きしすぎると、油揚げ本来の風味や食感が損なわれる可能性があるため、適切な時間で行うことが重要です。
2. 適量を摂取する
油揚げは高カロリーな食品であることを忘れずに、摂取量には注意しましょう。1日の摂取量を決め、計画的に食べるように心がけましょう。例えば、1日に1枚までにする、または、油揚げを使用する料理の量を調整するなど、工夫が必要です。自身のカロリー摂取目標量に合わせて、油揚げの摂取量を調整することが重要です。
3. 組み合わせを工夫する
油揚げは、野菜やきのこ、豆腐などの低カロリーな食材と組み合わせることで、バランスの良い食事になります。例えば、野菜たっぷりの味噌汁に入れたり、きのこと一緒に炒め物にしたりすることで、栄養価を高め、カロリーを調整することができます。また、油揚げの代わりに、低脂肪の厚揚げや焼き豆腐を選ぶことも一つの方法です。
まとめ
油揚げは、高脂肪であるというデメリットを持つ一方で、大豆イソフラボンなどの栄養素が豊富で、健康に良い影響を与える可能性も秘めた食品です。油抜きなどの工夫を行い、適量を摂取し、他の食材とバランスよく組み合わせることで、油揚げのメリットを享受しつつ、デメリットを最小限に抑えることができます。
バランスの良い食事の一環として、上手に油揚げを取り入れていきましょう。ただし、健康状態や体質によっては、摂取を控えるべき場合もありますので、気になる点があれば医師や管理栄養士に相談することをお勧めします。